レシピ&エッセイの白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

操の「へぇ~!」な雑学

第41話 ウィーピングローズ

「ムッシュ・フルーリの花探検 in フラワーセンター」
吾輩、ムッシュ・フルーリは、実は、 何を隠そう兵庫県立フラワーセンターという植物園の園長なんだ! 今回からは、我がフラワーセンターが誇る4,500種類にも及ぶ膨大な植物コレクションの中から、 その季節ごとに咲くとっておきの一品を紹介していくぞ!  栽培が難しくて国内では滅多に見ることのできない花、 形が奇妙で花らしくない花、普段何気なく目にしているけど、実はこんな変わった性質がある花、 そして世界中でフラワーセンターでしか見ることのできない植物などなど、次々と興味深い花たちを紹介していくから、楽しみにな!

第41話 ウィーピングローズ
6月といえば梅雨だけど、フラワーセンターでは梅雨入りの前には、亀の倉池の北東側にあるバラ園が最も華やかな季節を迎えるんだ。ここでは230品種、1,200株のバラが豪華絢爛に咲き誇っているぞ。でも、入園者からは、バラ園が園内の一番奥くにあるので・・・と言うボヤキがしばしば聞こえていたんだよ。
それなら、移動可能なバラのコンテナ植栽を作って、花の時期にフラワーセンターのメインストリートである「友愛の道」に並べようということになったんだ。

◀▼友愛の道に展示されているウィーピングローズ

折角作るんだったら、ありきたりのコンテナ植栽じゃあつまらない! という多数の意見を取り入れ、考え付いたのがウィーピング仕立てのコンテナ植栽。フラワーセンターには、バラの専門技術者もいるので、その職員に任せることになったのが、7年ほど前のこと。
それで、今展示しているようなコンテナ栽培のウィーピングローズが50鉢ほど出来上がったんだ。

ところで、写真のようなウィーピング仕立てという仕立て方は、どのように作り上げるか知っているかな? まずは、山に行ってノイバラを探すところから始めるんだ。そして2m位に真っ直ぐ伸びた枝を切り出してくるんだけど、野生状態のノイバラだから、そう簡単には真っ直ぐに伸びた枝は見つからないんだけどね。でも、これがないとウィーピング仕立てが始まらないからねえ。
そして、採取してきた2mくらいの真っ直ぐに伸びた枝を挿し木して発根させるんだ。発根すれば鉢上げをして、高さを1.6mほどに切りそろえ、その枝先につるバラの園芸品種を芽接ぎするのさ。もちろんその枝先には数個の芽接ぎをするんだぞ。
芽接ぎが成功すれば、春にその芽が伸びてくるんだ。芽が出てきたら、傘型の支柱のあるコンテナに植え込んで、伸びた枝を傘の骨に当たる部分に八方に誘引していくのさ。その後3年ほど傘型に誘引していけば、ウィーピング仕立て骨組みは完成だね。あとは毎年できるだけ伸びた枝を枝垂れるように誘引して、地面に届くほどまでくれば完璧なんだけど、それには10年くらいかかるかな?


一般の家庭では、このサイズではちょっと大きすぎるので、半分くらいの高さで作ってみるといいよ! 台木に使うノイバラの1mくらいの枝を山で切り出してくるんだけど、ノイバラはご存じのとおり、たくさんのトゲがあるので、山行きには十分にトゲ対策の装備をしていくんだぞ。そうしないとひっかき傷だらけになるからな。 ぜひ、一度挑戦してみては?。

フラワーセンターでは、「バラのウィーピングフェア」を6月12日まで開催しているので、是非見に来てくれよな!!

「ウィーピングローズ」を見に行こう!
兵庫県立フラワーセンターHPはこちら>

ムッシュ・フルーリは白井にとって緑の知恵袋のような存在。バックナンバー「ムッシュ・フルーリ緑の扉」にも植物の知りたいコトが満載です。

第40話 ユリノキ(チューリップツリー)

第40話 ユリノキ(チューリップツリー)

みんなはユリノキって言う名前の樹木を知っているかなぁ? 都市部の街路樹によく使われているんだけど、意外と知っている人は少ないんだよね。
ということで、今回はフラワーセンターの芝生広場にすっくと立っている大木、ユリノキの話をしようか。

◀芝生広場にすっくと立っているユリノキの自然樹形(長卵形)

ユリノキは、北米東部原産のモクレン科に属する落葉高木で、高さ45メートルにも達することもある大きな木なんだ。フラワーセンターには、開園当初(昭和51年)に植えられた数本のユリノキがあるけど、高さは20メートル~30メートルほどかな。中でも芝生広場に植えられたものは(このユリノキの葉は斑入り)、周りに他の樹木がないため、だれにも邪魔されず、ユリノキ本来の樹形を見ることができるんだ。ユリノキの樹形は長卵形で、卵を上下に伸ばしたような形をしていて、自然に整った形に育つんだよ。フラワーセンターのユリノキもほとんど剪定をしていなくてもきれいな長卵形に育っているよね。

ユリノキの特徴はその花と葉にあるんだ。花は5~6月に枝先に咲くんだけど、フラワーセンターほどの大木になると、その花を間近に見ることはできないのが玉に瑕(だから余計に知っている人が少ないんだけどね)。でも、写真に見るように、淡い黄緑色の花弁の付け根にオレンジ色のブロッチが入ってなかなか奇麗だろう? しかもその形がチューリップの花に似ているので、英語でチューリップツリー(Tulip Tree)と呼ばれているんだ。そのうえ、ユリノキの学名は、Liriodendron tulipifera って言うんだけど、属名のLiriodendronは、ラテン語のlirion ユリ+dendron木なので、そのまま日本語に訳してユリノキ。種小名のtulipiferaは、同じくラテン語で「チューリップ状の花を生じる」って言う意味なんだ。だから英語ではTulip Treeって言うんだよ。じっくりと花を観察してみてごらん!
   
▲ユリノキの花(真横から見るとチューリップに似ている)

さて、ユリノキの葉は非常に特徴的な面白い形をしているんだ。ユリノキの葉を葉柄を上にして見ると、何かの形に似ているだろう? この形は若い人にはわからないかもね。じつは、袢纏(はんてん)という衣類の形にそっくりなんだよ。袢纏とは、羽織に似ているけど、脇にマチがなくて丈が短い上着なんだ。そうだ、「鬼滅の刃」の主人公の竈門丹治郎が羽織っているものといえばわかるかなぁ? で、その袢纏に葉の形が似ているもんだから、ハンテンボク(袢纏木)という別名もあるんだぞ。でも、若い人にはTシャツの方がわかりやすいかもね。
 
▲ユリノキの葉(形が半纏に似ていることからハンテンボクの別名がある)

春には袢纏に似た葉を芽出し、晩春から初夏にかけてチューリップに似た可愛らしい花を付け、晩秋にはその葉も黄色く色づき、初冬には散っていく。
是非、フラワーセンターのユリノキの一年を楽しんでみてごらん!

「ユリノキ(チューリップツリー」を見に行こう!
兵庫県立フラワーセンターHPはこちら>

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第39話 クレマチス・アルマンディと仙人草

第39話 クレマチス・アルマンディと仙人草

クレマチスといえば、早くて晩春から、多くの品種は初夏に大きなブルーや紫系の花を付ける蔓性の植物として有名だよね。テッセンとかカザグルマなんて呼ばれることもあるよね。 でも、最近は3月半ばともなると、園芸店の店先に、早くも行灯(あんどん)仕立てにした鉢植えが出回り始めるけど、それはハウス内で促成栽培したものだから、鉢植えを買って帰っても、寒い戸外に置かないようにしないとだめだぞ。気温が下がって遅霜にでも当たってしまうと枯れてしまうこともあるから注意するようにな。
一般的なクレマチスの品種は、落葉性のつる植物で、ほとんど初夏の花だって思って間違いはないんだけど、野生のクレマチスの中には、早春に咲くもの、真夏に咲くものや真冬に咲くもの、それに常緑のものだってあるんだぞ!

そこで今回は、まず早春にいち早く、甘い香りを漂わせながら、真白な花を数多く咲かせるクレマチス・アルマンディという種類を紹介しよう。フラワーセンターには、なぜかクレマチスはこの種類だけしか植栽されていないんだけど、その理由はさておき、3月の半ばにもなると、ノウゼンカズラ棚の西側にこんもりと茂っているアルマンディは花を咲かせ始め、ほとんどの葉の付け根に数輪ずつの真っ白な花を付けるんだよ。
◀真っ白に咲き乱れるクレマチス・アルマンディ▶

4月上旬にもなると、写真の様に株全体が雪を被ったように真っ白に染まるんだ。暑さ寒さに強く、生長が早く、しかも常緑で、桜(ソメイヨシノ)が咲く前に香りのよい真っ白な花をたくさん咲かせてくれるアルマンディは、垣根やフェンスに絡ませると最高だよ。

次に紹介するのは、仙人草と呼ばれている夏咲きのクレマチスなんだ。仙人草は、日本の野山に自生するクレマチスで、これもアルマンディと同じように生長が早く、丈夫で育てやすいんだけど、あんまり知られていなんだよね。仙人草は、園内の飯盛山に自然に生えていて、毎年8月下旬になるとアルマンディと同じように株全体を真っ白な花で覆ってくれるんだよ。一輪の花は、アルマンディよりは小さくて3センチほどなんだけど、アルマンディよりも花数が多くて真夏に雪が積もったように見えるんだ。
◀晩夏に雪が積もったように真っ白に咲く仙人草▲
早春には、アルマンディの花を、晩夏には仙人草の花を、フラワーセンターの園内で探してみてごらん!

 

 

「クレマチス・アルマンディと仙人草」を見に行こう!
兵庫県立フラワーセンターHPはこちら>

 

 

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