レシピ&エッセイの白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

富山ポジティブシンキング

第7回 ホタルイカとわかめ

2022/3/3 

東京から富山に移住して、改めて地方の食の豊かさや健康の大切さを学んでいます。富山暮らしで発見したこと、気がついたこと、クスッと笑えるネタになるようなことを徒然と語ります。

田原朋子(プロフィール)
子育てがひと段落したこともあり、30年間勤めた某公共放送系実用出版社を退社して富山県富山市にIターン。夫と猫と気楽なマンション暮らし。現在はフリーで、食と健康の編集企画・ライター業を営む。得意分野は実用もの。白井操先生には、テキストの編集や広告部での仕事でたくさんのご縁をいただいた。
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第7回 ホタルイカとわかめ

気がついたら日差しは長くなっているし、雪ではなくて雨が降るようになっていて、店先には380円のゆでホタルイカや、1パック98円の新わかめが並んでいました。
兵庫県の日本海側もホタルイカは有名ですよね。富山もまた、有名な産地なのです。
▶漁解禁のシーズンは、生のホタルイカも出回ります(生では食べない!)。地元の友人に聞くと定番の酢味噌やパスタのほか、バター醤油で炒めて黒胡椒を振るのもおすすめとか。

 

そんなことを、同じように富山に移住してきた友人と話していると「夫は腰まで海に浸かれるアイテムを買って、今年こそ本物の沖漬けを作ると意気込んでいます」というんです。
アウトドア派の彼は、醤油を入れた袋を腰に下げて海に入り、網ですくったホタルイカを直接そこにダイブさせる、という計画を立てているとか。

◀昨年は、滑川市のホタルイカミュージアムで泳ぐホタルイカを見てきました。けっこう大きいです!

ホタルイカは、ホタルイカ的に都合の良い条件(潮とか暗がりとか風向きとか)が整えば海岸に湧いてきて、青く発光します。昨年の春は、ホタルイカと自分達のタイミングがずれて発光を見られませんでしたが、今年は見られるとよいな。

そんなことを書きながら、富山に来て2回目の春なんだ、と改めて思ったのでした。

◀つい先日までの雪景色も、もうおしまいです。

▶全国共通、沈丁花の香りが漂い始めました。

第6回 なんなんと里芋

2021/11/19 

東京から富山に移住して、改めて地方の食の豊かさや健康の大切さを学んでいます。富山暮らしで発見したこと、気がついたこと、クスッと笑えるネタになるようなことを徒然と語ります。

田原朋子(プロフィール)
子育てがひと段落したこともあり、30年間勤めた某公共放送系実用出版社を退社して富山県富山市にIターン。夫と猫と気楽なマンション暮らし。現在はフリーで、食と健康の編集企画・ライター業を営む。得意分野は実用もの。白井操先生には、テキストの編集や広告部での仕事でたくさんのご縁をいただいた。
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第6回 なんなんと里芋
このまたたび、3つで1000円にしときますよ。いかがですか?
「なん」
レジ袋ご利用ですか?
「なんなん」
猫飼ってらっしゃるんですか?
「なーん」

これ、猫との会話ではありません!
富山護國神社で毎月開催されている「のみの市」で、猫雑貨グッズを販売する友人を手伝った時の会話。「なん」とは、「いいえ」の意味で、知る人ぞ知る便利な富山弁です。仕事でもプライベートでも、会話の端々に「なーん」「なンなンなンなンなン(超高速)」を連発させると、どんな会話もポンポンと弾みます?!

◀▲富山のみの市は、朝まだ暗い6時ごろから始まって、人気店は9時に売り切れてしまいます。写真は昨年の11月1日に出店した時の様子です。私たちのお隣では、自家製野菜を売っていました。

もう一つ、印象的な富山弁がありました。
「この器、そばちょこに使えんちゃ」
いったい、使えるのか使えないのか、どっちでしょう?
正解は、「使えます」。
富山弁の柔らかい表現に、ほっこりします。

売れるものなら何でもありの富山のみの市。観光客はほとんどいません。家の蔵から引っ張り出してきたお宝、近所の人気カフェやパン屋の出張ブース、季節感あふれる家庭菜園の野菜も並んでいます。野菜の種類も、エゴマの葉っぱ、金時草、ネギ、春菊、クワイ、里芋など、ちょっと珍しいものからふだんの野菜まで。すぐに売れていきます。

里芋といえば、富山県内では、南砺市や上市町が伝統的な里芋の産地として知られています。東京で見かける里芋と品種が違うのか、玉が大きく、煮るととても柔らかくなります。ちょっと季節はずれですが、里芋とお米を使ったおはぎ「いもがい餅」は、富山県の郷土食の一つです。おいしい里芋、冬は煮物やおせちに大活躍ですね!

▲里芋は「大和」という品種が人気です。一つ90gくらいの大玉を見かけました。農協の方に伺ったところ、収穫後に十分乾燥させてから出荷するため、かなり日持ちするそうですよ。

▶郊外にある水墨美術館庭園の遠景です。樹木を雪から守る「雪吊り」と、紅葉のコントラストがキレイでした。冬間近です!

第5回 秋の始まりとフクラギ 

2021/9/8 

東京から富山に移住して、改めて地方の食の豊かさや健康の大切さを学んでいます。富山暮らしで発見したこと、気がついたこと、クスッと笑えるネタになるようなことを徒然と語ります。

田原朋子(プロフィール)
子育てがひと段落したこともあり、30年間勤めた某公共放送系実用出版社を退社して富山県富山市にIターン。夫と猫と気楽なマンション暮らし。現在はフリーで、食と健康の編集企画・ライター業を営む。得意分野は実用もの。白井操先生には、テキストの編集や広告部での仕事でたくさんのご縁をいただいた。
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第5回 秋の始まりとフクラギ
朝5時、ふと目が覚めて東の方を見ると、立山連峰のシルエットがくっきりでした。あんまり素敵なので、近くの公園に散歩に出かけました。
富山の日の出は、二段構えです。あたりが明るくなって風が吹いてくる「日の出時刻」と、3000メートル級の山の上に顔を出す20分後。その瞬間、山全体に白い光が回ったと思うと、グングン角度を変えていって、白い光線は見えなくなるのです。
調子に乗ってアスレチック遊具の上に腰掛けていたのですが、ふと見下ろすと青い葉に隠れて、若い銀杏がたくさん成っていました。実りの季節には、いつも突然気付かされるものですね。

ところで、夏の終わりから刺身コーナーにでてくるのは、ブリの幼魚「フクラギ」です。富山では、ブリは一年中なんとなく見かけるのですが、春〜夏の「ツバイソ(コヅクラ)」からワンランク昇格したサイズがフクラギです。この時期はまだまだ脂もさっぱりして値段も手頃。味わいもブリとはだいぶ違います。ブリの呼び名は地方で異なるものですが、関東にいた時には「ハマチ」ぐらいしか区別されていなかったような気がします。こちらでは明確に区別されていて、そんなところからも富山のブリ愛を感じました。
日差しはまだまだキツいけれど、こんなところからも秋の始まりを実感しています。

▲フクラギのお刺身は、ブリよりもあっさりして旨味も強く、クセになる美味しさです。

 

▶店先では、コヅクラが400円くらい、フクラギが700円くらいで売られています。大きさ以外の違いはよくわからず。。。写真はコヅクラです。

 

 

 

◀富山の呉羽地区には梨農家さんが多く、「呉羽梨」のブランドで幸水や豊水などが出ています。9月には直売も盛んで、大小取り混ぜて1000円!

 

 

 


▶9月の後半には、山も完全に秋になります。写真は昨年撮影した室堂周辺のチングルマです(20200926)。

第4回 梅と地魚

2021/6/17 

東京から富山に移住して、改めて地方の食の豊かさや健康の大切さを学んでいます。富山暮らしで発見したこと、気がついたこと、クスッと笑えるネタになるようなことを徒然と語ります。

田原朋子(プロフィール)
子育てがひと段落したこともあり、30年間勤めた某公共放送系実用出版社を退社して富山県富山市にIターン。夫と猫と気楽なマンション暮らし。現在はフリーで、食と健康の編集企画・ライター業を営む。得意分野は実用もの。白井操先生には、テキストの編集や広告部での仕事でたくさんのご縁をいただいた。
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第4回 梅と地魚

6月に入って気温急上昇です。富山市のまちなかの狭いマンションでステイホームするのが辛い時は、パソコンを抱え、自転車で15分ほどにある涼しい図書館に出勤します。途中のアーケードには、地産地消の農産物を売る直売所があって、通りがかりにチェックします。

富山はフェーン現象で猛暑になるうえ、7月には梅雨でたっぷりと雨が降ります。この高温多湿に対抗するために、青梅シロップを作ろうと直売所をのぞいたら、富山県産の梅はまだ出ていませんでした。梅といえば「稲積(いなづみ)梅の梅干し」というのがあるばかり。この「稲積梅」は初耳です。

「稲積梅」は富山県氷見市の固有種で、核が小さくて肉厚な梅だそうです。稲積生産組合に、青梅の出荷はいつなのか電話で伺ってみたところ「晩成種なので出回るのは6/20過ぎかな」とのこと。ということで、とりあえず青梅シロップ第1回戦は、近所のスーパーで買った和歌山県産の青梅で漬けることにしました。

▶梅シロップ作り第1回戦は、和歌山県産にしました。富山県氷見市名産の稲積梅は、6月下旬に出回るそうなので、こちらで仕込むのも楽しみです。

 

ちなみに、このスーパーでは、お魚がとっても充実しています。珍しいところでは深海魚のメギス(ニギス)が、5尾で250円という驚きのコスパです。富山弁で「きときと」のお魚、白井先生にもちょっとお送りしますね……。

◀メギスとかミギス、ニギスとも呼ばれている深海魚です。スーパーによって表示が違いました!

 

……なんと、大発見がありました。関西では、ニギスの生はないけれど、焼いて串に刺した干物が昔からあるそうです。「少しほろ苦くて、お豆腐と炊いていただく懐かしいおかずですよ」とのこと。脂が乗っておいしいニギスを、日本海から太平洋側へ。何とか食べたい、と昔の人が工夫したんだと2人で感動しました。

今はクール便で送れますが、どうしても鮮度は落ちてしまいます。今度は、特急サンダーバードで朝獲れをお届けしたいです!

 

第3回「春」と「白えび」

2021/4/6 

東京から富山に移住して、改めて地方の食の豊かさや健康の大切さを学んでいます。富山暮らしで発見したこと、気がついたこと、クスッと笑えるネタになるようなことを徒然と語ります。

田原朋子(プロフィール)
子育てがひと段落したこともあり、30年間勤めた某公共放送系実用出版社を退社して富山県富山市にIターン。夫と猫と気楽なマンション暮らし。現在はフリーで、食と健康の編集企画・ライター業を営む。得意分野は実用もの。白井操先生には、テキストの編集や広告部での仕事でたくさんのご縁をいただいた。
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第3回 「春」と「白えび」
今年の桜は、全国的に早く咲きましたね。富山市内の桜の名所「松川・磯部堤」でも、3月26日に咲き始めたと思ったら、ポカポカ陽気であっという間に満開。4月4日には雨が降って花吹雪です。お弁当を持ってお花見とはいきませんが、たくさんの人が桜並木をそぞろ歩いていました。ユキヤナギやチューリップなども一斉に咲き、街路樹のけやきも新緑に。富山の本格的な春到来です。
さて、もう一つ、この季節の富山でのお楽しみといえば「白えび」漁の解禁です。白えびは、「富山湾の宝石」とも言われている小さなえびです。駿河湾で取れる「桜えび」の仲間ですが、その名前の通り白〜薄紅色。色合いで見たら、どちらかと言えば「白えびの方こそソメイヨシノの花びらと同じ色だなあ」と思います。

▶花も旬の食材も、一年ごとのお楽しみですね。散り際の花びらのじゅうたんや、花いかだは、桜ならではの風景で風情があります。

 

 

そんな白えびとの出会いは、富山に来たばかりだった昨年の9月です。スーパーマーケットに並ぶ高級食材・白えびに感動して「さすが富山だ!」と思いました。ところが、冬になると売られていない。なんということはない、もうその年の漁が終わってしまったのでした。旬にはルールがあるのですね。
 白えび漁ができるのは、日本全国でも水深が深い富山湾だけ。しかも4月1日から11月末までしか行われていません。これも貴重な資源を守るためです。ちなみに、土産物屋などに行けば、冷凍のむき身などが年間を通して売られています。殻をむいた白えびは、一つ一つが小指の先ほど小さく、高級寿司ネタなんですよ。

◀白えびはひげが長くて、よく見ると前脚のカギ爪の先がきれいな紅色をしています。殻つきならではの発見でした

 

 

というわけで、数か月ぶりに白えびとの再会ができました。やはり「初もの」「ハシリ」は気分が上がります。白えびは、ボタンえびや伊勢えびのように、「ここにいるよ!」と存在感を主張しすぎることもなく、影薄く3〜5cmの小さな体に長いヒゲを揺らせて店頭に並んでいます。冷凍後であれば殻がむきやすくなるそうですが、家庭で行うのはかなり大変です。
さて、どうやって食べようかしら。手っ取り早いのは、粉をつけて、から揚げでしょうか。
地元の友人おすすめの食べ方は、しいたけやたまねぎと一緒に煮てうま味たっぷりの「そうめんつゆ」を作ることでした。出盛りになったら、これもぜひ、試してみたいと思います。

▶かたくり粉をふって揚げ、レタスにのせたらレモンを絞るだけ。ビールがとても進みます。